不登校35万人時代、支援が届かないのはなぜ?公認心理師が明かす「4つのズレ」と解決のヒント
不登校の子どもたち、支援が届かない現状
日本において不登校の児童生徒数は増加の一途をたどり、2024年度には過去最多の353,970人となりました。そのうち約4割にあたる136,000人の子どもたちが、どの支援機関にもつながっていない「完全孤立」の状態にあると言われています。社会は居場所を作り、制度を整え、補助金を動かしているにもかかわらず、なぜこの数字は増え続けるのでしょうか。
先日最終回を迎えた日本テレビ系ドラマ「タツキ先生は甘すぎる!」を巡るSNSでの議論は、この問題の根深さを浮き彫りにしました。ドラマに対して「逃げ癖がつく」「不登校が増える」といった批判的な声が上がる一方で、当事者や保護者からは共感の声が多く寄せられたのです。
公認心理師の鰐渕遊太氏は、この賛否の分かれる状況について、「価値観のズレが、まだ社会に根強く残っていることの、生きた証拠だ。現場で私が見てきたことと、驚くほど重なる」と分析しています。多くの大人が「頑張れば乗り越えられる」と考える善意が、かえって子どもたちを追い詰めているのかもしれません。
支援が届かない「4つの構造的ズレ」
鰐渕氏は、不登校の子どもたちへの支援が届かない理由を「善意が連鎖的にズレていく構造がある」と語り、以下の4つの視点からそのズレを解説しています。
ズレ① 子どものニーズと運営の論理の食い違い
子どものニーズに応えようとすると親が離れてしまい、親のニーズに応えようとすると子どもが来なくなってしまうという現状があります。子ども・親・運営側の三者が同時に満たされるような仕組みが、まだ十分に整っていないのかもしれません。
ズレ② 「せめてこれくらいは」が家庭を追い詰める
不登校の保護者の約5人に1人が離職・休職を経験しており、その退職理由の70.1%が「子どものサポートのため」という調査結果もあります。親の愛情から出る「せめてこれくらいは」という言葉が、子どもにとって最後の安全地帯である家庭を、かえって追い詰める場所へと変えてしまうことがあります。
ズレ③ 経済格差が居場所への道を閉ざす
フリースクールの月額費用は平均約45,000円とされ、保護者の約6割が「家計への負担感がある」と感じています。居場所にたどり着けるかどうかが、家庭の経済力や居住地によって決まってしまう社会構造は、不登校による離職がさらに格差を広げる要因にもなっています。
ズレ④ 集団でなければ社会性が育たないという思い込み
「社会性は集団でなければ育たない」という考え方は、子どもたちを追い詰めることがあります。しかし、社会性を育む上で本当に大切なのは、集団の規模ではなく「この人といると安心だ」という感覚の積み重ねです。安心できる関係性がまずあり、その後に集団での関わりを考えることが大切であると指摘されています。

鰐渕氏は、これら4つのズレはすべて「子どもを変えようとすること」という同じ根っこから生まれていると結論づけています。子どもを変えるのではなく、大人が子どもへの見方を変えることで、子どもたちは変わっていくというメッセージが込められています。
「アンペアの足りない世界」シリーズのご紹介
公認心理師の鰐渕遊太氏が執筆する「アンペアの足りない世界」シリーズは、不登校の子どもたちが抱える問題に深く切り込み、多くの親や支援者から共感と支持を得ています。
第1弾|アンペアの足りない世界で生きている子どもたち
2026年1月23日に発売され、Amazon書籍部門で1位を獲得しました。

この本では、不登校を「心のブレーカーが落ちた状態」と捉え、何が起きているのかを深く掘り下げています。読者からは「子どもへの申し訳なさと、これからへの希望が同時にやってきた」といった声が寄せられています。
第2弾|アンペアの足りない世界で生きてきた元子どもたち
2026年3月20日に発売されました。

子どもの問題は、その子の中にあるのではなく、大人との関係性の中にあると説きます。信州大学医学部教授の児童精神科医・本田秀夫氏は「子どもに関わるすべての大人に気づいてほしい大事な視点! 心のブレイクダウンを防ぐための必読書です」と推薦しています。
第3弾|アンペアの足りない世界 ―ボタンの掛け違いを科学する―
2026年6月1日に発売された最新作です。

子どものために一生懸命やっているのに、なぜか距離が縮まらないと感じている方へ向けた一冊です。「安心が先。勉強は後。」という、私たちがもともと知っていたはずの順番を思い出すための本です。精神科医さわ氏は「子育てはこれに尽きる!勉強はいつからでもやり直せる。遊びは取り返しがつかない。 すべての親に知っておいてほしいことが書かれている一冊です」と推薦しています。
これらのシリーズは、1冊からでも、順番に読んでも、それぞれの視点から大切な気づきを与えてくれるでしょう。
著者プロフィール

鰐渕 遊太(わにぶち ゆうた)氏は、株式会社TONALINO 代表取締役、東京造形大学 非常勤講師を務める公認心理師、特別支援教育士 S.E.N.Sです。公立小学校で10年間教壇に立ち、不登校特例校や特別支援学級など様々な現場を経験してきました。独立後、「子どもを変えようとしていた」ことに気づき、現在は東京都内で約180名の子どもたちの居場所を5拠点で運営しています。

教育相談スーパーバイザーとして学校現場に関わる傍ら、多摩市教育センターの公認心理師として行政と協働し、東京造形大学では教育心理学・教育相談を教えています。学校の内側も外側も、制度の論理も子どもの現実も、両方を見てきた20年間の経験が、この3冊の書籍の根拠となっています。
関連イベント
2026年6月27日(土)には、シンポジウム「それ、あなたのせいじゃない。」が開催されます。本田秀夫氏、精神科医さわ氏、森村美和子氏、鰐渕遊太氏の4名が登壇し、不登校を抱える親御さんの「あなたのせいじゃない。でも、そう思えない夜があるはず」という気持ちに寄り添い、一緒に考える機会となるでしょう。
関連リンク
- Amazon Kindleストア 鰐渕遊太氏著書一覧: https://www.amazon.co.jp/stores/%E9%B0%9A%E6%B8%95-%E9%81%8A%E5%A4%AA/author/B0GJK3QJKD?ref=sr_ntt_srch_lnk_1&qid=1781369109&sr=1-1&shoppingPortalEnabled=true
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