映画『急に具合が悪くなる』原作者・磯野真穂さんの最新刊『社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学』が9月28日に刊行決定!
磯野真穂氏の最新刊、メアリ・ダグラスの人類学を現代に問い直す
東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授である人類学者、磯野真穂さんの新刊『社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学』(新潮選書刊)が、2026年9月28日(月)に発売されることが決定しました。磯野さんは、宮野真生子さんとの共著『急に具合が悪くなる』が濱口竜介監督によって映画化され、今年のカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を獲得するなど、現在大きな注目を集めています。

約半世紀前の「予言書」を現代に
近年、人類学はビジネス分野でも注目されていますが、その中にあって、ほとんど知られていない一冊の古典があります。それが、イギリスの人類学者メアリ・ダグラス(1921-2007)の著書『ナチュラル・シンボル(Natural Symbols)』です。
約半世紀前に書かれたこの本は、近い将来、苛烈な競争社会が到来し、人々の孤独と不安がますます増していくことを警告していました。また、一人ひとりに価値を見出そうとする人々と、民族や国家のような大きな存在に救いを求める人々との間で社会が分断されていくことも予測していたのです。さらに、セカイ系のようなジャンルが生まれ、推し活のような現象が広がり、人々が自身の身体を変えることに一層励むだろうことも示唆されています。同書は、私たちの盲点をつくような角度から、これらの事柄をまるで予言書のように描いています。
本書『社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学』は、このダグラスの思想を現代社会に即した形で甦らせ、アップデートすることで、より良い社会を築くための「塩梅(あんばい)」の探り方を提示しようとする意欲的な作品です。
著者・磯野真穂さんのコメントから
磯野さんは、自身の著書『急に具合が悪くなる』や『他者と生きる』の刊行後、「偶然性や境界をなくすこと、複雑性に耐えること」を讃える本や依頼が増える中で、ある種の違和感を抱いたといいます。
「もちろんそれは大変にありがたいことでした。ただ私が違和感を覚えざるをえなかったのは、そのような本や依頼の中に、何かを分類したり、境界を設けること自体を問題視したり、現在ある制度を壊しさえすれば、より善い社会が訪れるだろうという素朴な期待や確信が、それなりの数で混じっていたことにあります。」と磯野さんは語ります。
分類し、境界を作るふるまいがあるからこそ、そこにはまり込まない存在は価値を持ちます。構造という必然があるからこそ、偶然は光を放つ。前者を否定したら、後者も消えてしまう、という批判を急ぐあまり忘れられているように感じられたとのことです。
約半世紀前に同様のことを警告していたのが、メアリ・ダグラスでした。ダグラスは、象徴(シンボル)という観点から、人間が構造と非構造を行き来しながら社会を存続させてきたかを、狩猟採集民から産業社会までを縦横無尽に解説しています。「ひとりひとりが輝けば社会はよくなる」という価値観と、「国家とか民族とかを守り抜けば社会は良くなる」という価値観が、どのような象徴のもとに立ち上がり、その根底で人々は何に苦しんでいるのかを解き明かします。
「社会はなんだかおかしな方向に向かっているし、社会を良くしようとする試みすら、社会を悪くしているような気さえする。そんなことを感じている人たちに本書が届けば望外の喜びです。」と磯野さんは本書への思いを寄せています。
内容紹介
私たちは生きやすい社会を作るために、個人を束縛する宗教や儀式を捨て、自由を尊重する社会を築いてきました。それにもかかわらず、なぜ強い不全感や孤独感に襲われ、終わりの見えない自己研鑽や社会変革に駆り立てられてしまうのでしょうか。
本書は、人類学者メアリ・ダグラスが遺した「予言」を手がかりに、私たちが辿り着いた現在の能力資本主義がどのような特徴を持った社会なのかを考察し、より良い社会を築くためのヒントを提示するものです。
著者紹介:磯野真穂(いその・まほ)
人類学者。東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授。長野県安曇野市出身。早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業後、オレゴン州立大学スポーツ科学部に学士編入。その後、文化人類学に専攻を変更し、同大学大学院にて応用人類学修士号を取得。IT企業での勤務を経て、早稲田大学文学研究科で博士(文学)を取得。早稲田大学文化構想学部助教、国際医療福祉大学大学院准教授を歴任し、2020年より在野の研究者として活動。2024年より現職。専門は医療人類学です。
主な著書に『なぜふつうに食べられないのか:拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界:「いのちの守り人」の人類学』(ちくま新書)、『ダイエット幻想:やせること、愛されること』(ちくまプリマー新書)、『他者と生きる:リスク・病い・死をめぐる人類学』(集英社新書)、『コロナ禍と出会い直す:不要不急の人類学ノート』(柏書房、第33回山本七平賞受賞)、宮野真生子さんとの共著に、濱口竜介監督により映画化されカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した『急に具合が悪くなる』(晶文社)などがあります。
書籍データ
- タイトル: 社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学
- 著者名: 磯野真穂
- 発売日: 2026年9月28日(月)
- 造本: 新潮選書(四六判変型ソフトカバー)
- 本体定価: 1,980円(税込)
- ISBN: 978-4-10-603953-9
- 詳細情報: https://www.shinchosha.co.jp/book/603953/
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