2025年の企業休廃業・解散は6万7949件、過去10年で2番目の多さ。黒字休廃業は初の5割以下に
2025年の休廃業・解散動向
2025年に休業・廃業、解散した企業は全国で6万7949件に上りました。これは前年(6万9019件)から1.6%の減少となり、3年ぶりに前年を下回ったものの、過去10年では2024年に次いで2番目に多い水準です。この動きは、中小零細企業の「静かな退場」が水面下で進行していることを示唆しています。

休廃業した企業による雇用者数は、少なくとも累計9万3272人にも及び、前年(8万7003人)から約6000人増加し、2016年以降で最多を更新しました。すべての雇用機会が失われたわけではありませんが、2025年には経営者を除く約9万人を超える従業員が転退職を迫られた計算になります。コロナ禍の2020年以降では、累計約50万人分の雇用が失われたことになります。

「黒字」休廃業が初の50%割れ
2025年に休廃業となった企業のうち、直近損益が「黒字」だった企業の割合は49.1%となり、調査開始以来初めて50%を下回りました。これは2020年(57.1%)をピークに5年連続で低下しています。また、保有資産が債務を上回る「資産超過型」の割合は63.4%で、2年ぶりに前年を下回りました。この結果、「資産超過」かつ「黒字」だった企業の割合は15.2%となり、2年連続で低下しています。この動向は、物価高や人件費などのコスト上昇が企業の損益を悪化させている現状を反映していると言えるでしょう。

中小零細事業者の「静かな退場」が進行
休廃業・解散企業の資本金別割合を見ると、2025年は資本金「100-1000万円未満」が44.7%と最も多く、コロナ禍前の2019年を上回る水準で推移しています。資本金「100万円未満」も8.8%と年々上昇傾向にあり、資本金1000万円未満の企業による休廃業・解散が半数を超えました。このことから、小規模・零細規模の企業を中心に休廃業が多く発生した1年だったことがわかります。

2020年から2022年にかけては、持続化給付金や雇用調整助成金などの資金繰り支援策によって休廃業が抑制されていましたが、2023年以降はこれらの支援策が縮小され、物価高、人手不足、経営者の高齢化や後継者問題など、複合的な経営課題が企業を圧迫しています。事業の将来が見通せず、これ以上の業績悪化を避けるため、手元資金に余裕があるうちに会社を畳む「静かな退場」を決断する中小零細企業が増加している可能性があります。
経営者の高齢化が加速
休廃業・解散時の経営者平均年齢は、2025年に71.5歳となり、5年連続で70代を維持し、過去最高を更新しました。最も休廃業が多い年齢も76歳と、15年前の2010年(63歳)から13歳上昇しています。年代別では「80代以上」の割合が24.4%と過去10年で約2倍に増加し、過去最高を更新しました。「70代」が最も高いものの、70代以上が全体の63.7%、60代以上では84.1%を占めており、休廃業を決断する経営者の高齢化が加速していることがわかります。

地域別・業種別の動向
地域別では、東京都が1万5804件と全国で唯一1万件を超え、最も多くの休廃業・解散が発生しました。増加率が最も高かったのは佐賀県で前年比16.9%増となり、地方部での増加が目立ちました。

業種別では、その他(詳細不明を含む)を除く全7業種で前年から増加しました。これは3年連続の傾向です。件数が最も多いのは「建設業」(8217件)で、前年比0.7%増。増加率が最も高かったのは「サービス業」(8165件、前年比7.0%増)でした。特定の業種では、「貴金属製品卸売」(60件、前年比62.2%増)が金価格の高騰や中国人観光客向け販売の停滞により大幅に増加。「映画・ビデオ制作」(61件、前年比56.4%増)も、制作費削減や人手不足、競合激化などの厳しい経営環境に直面し、増加しています。
能登半島地震からの2年、奥能登の休廃業・解散が倍増
令和6年能登半島地震の発生から2年が経過しました。震源に近く甚大な被害を受けた奥能登2市2町では、休廃業・解散件数が48件と判明し、震災前の過去5年平均(23件)から倍増、過去10年で最多となりました。能登地方全体では160件の休廃業・解散が発生しています。

奥能登では「サービス業」(12件)が最も多く、次いで「建設業」(8件)、「製造業」(4件)と広範囲な産業で発生しました。政府や自治体による支援策は実施されたものの、観光業や漁業などの一次産業へのダメージが大きく、度重なる被災や域外への人口流出が影響していると考えられます。復興が道半ばの能登地方では、生活基盤の再建で手一杯となり、事業再建まで手が回らないケースも少なくありません。地域経済の空洞化や人口流出といった経営環境の変化から、事業継続を断念する企業も発生しています。産婦人科「桑原母と子クリニック」を運営していた医療法人社団向陽会(七尾市)も、震災後の人口流出による妊婦減少で事業継続を断念した事例の一つです。
安定した事業環境や生活環境の確保がなければ、地震によって失われた商流が戻らないといった影響も懸念されます。今後の能登地方の休廃業・解散は、破損したインフラなどの再整備による事業再建への「期待度」が鍵を握るでしょう。
今後の見通し:静かな退場と二極化の加速
2025年の休廃業・解散動向は3年ぶりに減少したものの、年間では過去10年で2番目に多い高水準で推移しました。年間で1万件を超える見通しとなる企業倒産を合わせると、年間8万社に迫る企業が市場から退出した計算になります。休廃業・解散においては、平常時であれば安定した事業継続が可能な「資産超過」の割合が低下し、損益面で「黒字」の割合が50%を下回るなど、休廃業・解散の「質」の変化が見られました。
急速に進む物価高や人手不足によるコスト増に加え、設備の老朽化や後継者難といった経営課題も背景に、ひっそりと事業を畳む中小零細規模の企業が増加しています。中小企業支援の軸足が「資金繰り」から「事業再生」へと変化する中で、M&Aを活用した「前向きな廃業」も広がりつつありますが、収益力が極端に低い零細企業では、支援の輪に入ることができず、価値ある事業や経営資産を有しながら市場から姿を消す「二極化」が、今後より鮮明になるかもしれません。
2026年は、人手不足の解消や後継者の選定といった既存課題に加え、利上げによる借入金の利払い負担増といった局面にも直面し、経営環境は一層厳しさを増すことが予想されます。業績回復や収益基盤の再構築が遅れた企業、後継者問題や事業改革に課題を抱えた零細企業を中心に、企業体力に余力があるうちに会社を畳む「静かな退場」が2025年以上に増加する可能性があります。
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